
DOCSF-Japan Co-Founder 串岡 純一先生
興味深い学会やイベントを特集し、運営している「中の人」にいろいろ伺っていく、「中の人に聞いてみた!」です。
今回は日本時間2023年3月25日(土曜日)8時〜に開催される『DOCSF-JAPAN 2023』についてご紹介。
DOCSFのグローバルなネットワークとパッケージングを活用し、日本における「デジタル × 整形外科」領域において、スポーツやリハビリも含めた整形外科領域全般を対象とした日本初の整形外科領域に特化したオンラインフォーラム!とのことで、DOCSF-Japan Co-Founderの串岡 純一先生をお招きし、その魅力について伺います。
── 「中の人に聞いてみた!」ということで、今日来ていただいたのは、串岡 純一先生です。簡単に自己紹介から、よろしくお願いします。
皆さん初めまして、串岡純一と言います。
私は医師免許を取って臨床研修を行った後に、整形外科の研修に進みまして、一通りの研修を行って整形外科専門医になりました。
大学院に進学しまして、骨とか軟骨とか椎間板といった骨格に関する再生医療の研究に従事させていただいて、大学院を卒業して医学博士をいただきました。
そこから留学!という話だったのですが、ちょうどコロナ禍がヒットしまして、、、。
留学が延期になりました。
どうなることやらと思いましたが、2021年4月から無事に、今いるスタンフォード大学の整形外科にポスドク研究員として研究目的で留学しております。
今だいたい2年弱ぐらい経ったところです。
留学生活としては、基本的には研究が自分のメインの仕事なんですけれども、いろんな人とのつながりが増えて、今回この「DOCSF-JAPAN」を開催させていただく運びとなりました。
── ありがとうございます。コロナ禍で留学が延期になった人は多かったと思いますが、先生もそうだったのですね。
そうですね。留学が決まったのが2019年の夏あたりで、助成金の申請など留学の準備を進めていて、周りからも「あいつは2020年4月から留学するんだ」と思われていたのですが、2020年2月にダイヤモンドプリンセス号で未知の感染症が起こっているぞ、とニュースになって。。。
3月上旬頃には大変な事態になることがわかって、アメリカから「大丈夫ですか?」とメールが届きました。
ビザを得るためのスタンフォード大学からの書類は既に手元にあるような状況でしたが、ちょうどその頃から大使館もクローズになってビザも取れず、行ける雰囲気ではなかったです。3月中旬、出発予定の2週間ぐらい前に延期という決定になりました。
結局、留学先のラボ自体もその頃には閉鎖されていたので、もう新参者が行けるような感じではなかったですね。
── 2021年4月に留学するまでの1年間は何をされていたのですか?
結局、宙ぶらりんになっていたので、大学に所属していました。
大学院の研究がまだ終わってなかったので、残りの追加実験や論文を書くなどしながら、臨床の手伝いをちょっとしていました。
大学院5年生みたいな、そんな感じでしたね。
── ありがとうございます。留学まで苦労していた分、スタンフォード大学に行ってからの先生の充実ぶりは凄いと感じます。
今回のイベントDOCSFについて教えてください。
はい「Digital Orthopaedics Conference SanFrancisco」の頭文字を取っています。
名前の通りですが、整形外科のデジタルに関するカンファレンスをサンフランシスコでやる会議になります。
── 今回は「DOCSF」の日本版ができたということですね!
「DOCSF」自体は以前からやっていたんですよね。
恐らく2017年頃から、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)整形外科主催でやっているんですね。
UCSF整形外科で関節手術が専門のStefano Bini先生が、デジタルに明るい先生なのです。
彼がサンフランシスコベイエリアに集まるテック企業とうまく話をつけて、特に整形外科分野に限ってデジタルソリューションを実装するにはどうしたらいいかを話し合う会、という感じでできたと理解しています。
2017年頃は、テック企業がヘルスケアにもだんだん参入してきた時期だったと思います。
── 過去の登壇者を見てると結構面白いですよね。
Googleの人が登壇している年もあったり。
そうですね。
いわゆる普通の整形外科のカンファレンスとは違って、半分ぐらいのスピーカーはUCSFやUCLAのようなカリフォルニアのアカデミアから来てるんですけど、もう半分ぐらいのスピーカーは企業の方です。
いわゆる整形外科領域に関連が深いインプラント企業の方もいれば、全然関係ないようなテック企業の方もいるし、スタートアップの方、スタートアップを支援する側のエコシステムの方、デザイン思考を教えている企業の方、などなど。
このような登壇者なので、ちょっと一味違ったカンファレンスという印象です。

── Stefano Bini先生はイタリア系の方なんですね。人工関節領域の先生がテックに明るいのは何でですかね?ナビゲーションとかを使う研究が多かったのでしょうか?
ナビゲーションとかロボティクス手術とか、そういったところから入っているんだと思うんですけれども、個人的にテックが好きという点が大きいと思いますね。
最初は趣味でやっていたことが段々仕事に結びついているような感じかなと。
Stefano Bini先生はイタリア系で陽気な方なので友達を作るのが得意なようで、ヘルスケアのイノベーターたちとのコミュニティの中にもどんどん入っていっています。
── DOCSFのポッドキャストがあったので試しに聞いてみたら、Stefano Bini先生が快活に喋っていて、、、「この人、凄いな」と思いました。
医師とは思えないですよね。TVキャスターかな、みたいな。
── UCSFではなくスタンフォード大学に留学している串岡先生が、Bini先生や「DOCSF」と繋がったきっかけは何だったのですか?
実はUCSFとスタンフォードって結構離れてるんですよね。
同じエリアなのですけど、車で1時間〜1時間半ぐらいかかるので、普通に生活していたら行き来することはない地域ですね。
きっかけは、スタンフォード大学整形外科でやっているレジデントとかフェロー向けのグラウンドラウンドという教育用カンファレンスにBini先生が呼ばれたことですね。
その講演がまさに「DOCSF」のような「デジタルソリューションスピリッツをどう整形外科に入れるか」みたいなタイトルで、面白そうだったので聴きに行ったんですね。
彼自身の研究以外にも、「DOCSF」などの取り組みを紹介してくれる内容でした。
実は、自分自身もスタンフォードで、ウェアラブルデバイスとかIMU (Inertial Measurement Unit) センサーとかのデバイスを患者さんに取り付けて、デジタルフェノタイプを探るような研究していましたので、「自分の研究ではこんなことをやっています」と話しかけて、デジタルソリューションスピリッツの可能性について軽くディスカッションさせてもらいました。
そうしたら「今度『DOCSF』のカンファレンスがあるから、ぜひ来てください」って言われて、2022年のDOCSFに招待していただけたんですね。
2日間、サンフランシスコで「DOCSF」に参加してみると面白くて、、、日本にはこういうイベントが全然ないと思って「日本にも広げていきませんか?」と提案すると、イタリア系でノリノリなので「OK! Let’sgo!」という感じで決まりました。
── 串岡先生の行動力ですね。Bini先生の講演後に、自身のショートプレゼンテーションから関係性を作り上げていく点が素晴らしいです。
本当にそれが始まりでした。
── 今回の「DOCSF-JAPAN」は日本時間の土曜日午前中(2023年3月25日(土)9:00-13:00)になっていますが、このためにわざわざコンテンツを作ってくれているのか、過去の「DOCSF」からコンテンツを切り出しているのか、どのような感じなんですか?
今回は全部「DOCSF-JAPAN」のために撮ってもらっています。凄いメンバーが集まっていて、UCSF整形外科のchairpersonや整形脊椎外科のチーフといった臨床的にすごい方も来てくれますし、企業の方も来てくれています。なかなか面白いコンテンツになるかなと思っております。
── 「DOCSF-JAPAN」の紹介文を読むと「『整形外科の未来』『デジタルトランスフォーメーション』『変革のための科学的根拠』の3つのテーマを取り上げ、デジタルヘルスや脊椎治療で盛り上がりを見せている最新技術や、米国におけるベンチャーキャピタルの状況、整形外科治療モデルに取り組むスタートアップのエキサイティングな世界、そしてシリコンバレーの伝説的企業IDEOによるデザイン思考を紹介します。」ということで楽しみです!!!

── 御登壇の方々にフォーカスしていきます。
UCSF整形外科から参加されるThomasVail先生やIDEO社からはYichengSun氏の名前があります。
Thomas Vail先生は簡単に言うと、UCSF整形外科の一番偉い先生ですね。
IDEOという会社は耳馴染みがないかもしれませんが、デザイン思考は聞いたことがある人もいるかと思います。
デザイン思考を広めたのがIDEO社です。
テック企業によるデザイン思考やスタンフォード大学d・schoolは有名ですが、実際に何なのかと聞かれると曖昧だったりします。
伝道師みたいな方から直接デザイン思考について伺えるとても良い機会なのかなと思います。
── プログラムを見ると面白そうなトピックが並んでいます。
「脊椎手術の最新技術」、「成長する整形領域のスタートアップ」、、、
有名なUCSFの脊椎外科医Sigurd Berven先生から「脊椎手術の最新技術」を伺います。
IMUというのは体に取り付けて加速度を記録し、どちらの方位に向いているかを記録してくれるセンサーで、皆さんが持っているスマートフォンにも、実はIMUセンサーは入っています。
整形外科は運動障害の患者さんが多いので、アウトカムとしては運動をどう良くするかなんですけど、今までは運動を評価するのに「主観的に歩けるようになった」とか「痛みが良くなりました」のような質問評で治療がうまくいっているか測っていたことが多いです。
IMUセンサーが出てきたことによって日常生活でどれくらい動けるようになっているのかをモニタリングできるようになっているので、そのような話をしていただこうと思っています。
「成長する整形領域のスタートアップ」はUnity Stoakesさんに講演していただきます。
彼は会社を経営してる方で、簡単に言うとスタートアップを支援するスタートアップを経営しています。
投資もするしアドバイスもするような会社です。
いろんなMSK領域(筋骨格系)のスタートアップがあるという話をしてもらいます。
サンフランシスコベイエリアはどんどんスタートアップが出てくる土壌なので、新たに生まれてきたスタートアップを紹介してもらうだけで面白いと思います。
── DOCSF Venture "Capital Investments in MSK"というテーマで話してくれる(Nancy Lynchさんはどのような方なのですか?
この方は「DOCSF」の方で、整形外科医です。
今は臨床をやっているか分からないですが、おそらくアドバイスとかコンサルをするような会社を運営されているんじゃないかと思います。
サンフランシスコで年1回カンファレンス形式で開催する「DOCSF」とは別に、「DOCSF-Venture」というのを4月頃に開催していて、彼女がMSK領域への投資の現状とか、どういうスタートアップが生まれているか講演されているので、MSK領域の投資が今どんな状況なのかをお話ししてもらおうと思っています。
── 整形外科はナビゲーションとかロボットのような医療機器の話になりがちで、ソフトウェアっぽい話ってあまりないのかなと思っています。ソフトウェアスタートアップをチェックしていると、どうしてもメンタルヘルスとかtelemedicine、病院の業務効率化といった領域がところが多い印象があるなと思っています。その辺、アメリカではどうでしょうか?
日本ではそういう認識だと思いますし、アメリカでもメンタルヘルスとかフェムテックとかオンコロジー領域とかが大きな領域になりますが、実はMSK領域も大きな市場になってきています。
例えば、Hinge Healthというスタートアップがあるのですが、上場直前ぐらいまで進んでいます。同様の会社が今アメリカには5個ぐらいあって、トータルのバリエーションでMSK領域も大きな市場になっているんですね。
保険制度の違いがあるので一概に日本に導入できるか分かりませんが、アメリカ人で筋骨格系の痛みを抱えている人はものすごく多いので、そういった人がたくさん病院にいくのはとアメリカの高い医療制度の中では難しいですよね。
そういうコストを下げるとか、保険会社からするとMSK領域に出す医療費が下がるというバリューを出しているスタートアップが多いですね。
── 確かに日本よりも課題が深そうですね。
そうですね。アメリカ人は結構痛がりで、すぐ病院にかかったりするので、闇が深いなと思います。
── 午後には「整形領域の最新テクノロジー」ですね。スピーカーはどなたですか?
UCSFのJeff Lotz先生に来てもらう予定です。
PHDのサイエンティストなんですが、ものすごく高名な先生で、NIHからとっている研究費の額が突出して多いんです。
おそらく整形外科領域では一番研究費が多いのではないかと思います。
テクノロジーに絡んだことも含めて幅広くやっていて、いわゆる細胞とか動物実験を使うような基礎研究から、画像とかコンピューターシミュレーションとか本当に幅広く行っています。
彼も元は椎間板とか背骨のバイオメカとかから始まっていると思うのですけど、今では運動器領域全ての研究を手がけていると思います。
── そしてIDEO社の「デザイン思考について」ですね。すごく楽しみですね。
これは私も結構楽しみなんですよね。
デザイン思考の授業を受けたり、ワークショップの経験もうあるのですけど、端的にデザイン思考を説明してくださいと言われても結構難しくて、、、。
イメージはあるのですけど、自分自身あまりクリアになっていないので。
── スタンフォード大学ですとバイオデザインというのがあると思いますけど、デザイン思考とバイオデザインの関わりについてはご存知ですか?
スタンフォード大学でアントレプレナーシップのコースはいくつもあるのですが、ほとんどのコースがデザイン思考を組み込んでいると思います。
もちろんバイオデザインもデザイン思考から由来していると思いますし、ビジネススクールの授業も結構デザイン思考を使って授業するところが多いので、デザイン思考がスタンフォード大学のコース内でコアな考え方の一つになっていると思います。
とはいえ、デザイン思考を医療に持ち込むのも一筋縄ではいきません。
おそらく、医療は関係者が多いので。それぞれの関係者の立場に立ってデザイン思考を取るとすごく複雑になってくるんじゃないかと思います。
一般的なプロダクトでいうと作る側と使う側のニ者ですが、医療では医療を施す側と患者サイド、保険を払う側、医療機器を作る会社とか、、いろんな方が入ってくるので難しいのだと思います。
── なるほど。だからこそ、実際の臨床現場に触れている医療者がデザイン思考を学ぶことの意味があるのかもしれませんね。
何か新しいものを作るにしても、医療の複雑さを知っていることが大事な気がします。
すごく充実したイベントですね。
これはオンラインだからこそ成り立つメンバーで、日本の学会に呼ぶとなったら無理ですよね。
音声だけでもいいので、皆さん是非ご参加お願いします。
── 2023年3月25日(土)8:00-12:00、もうPeatixのサイトから申し込めますね!
今回、串岡先生と UCSF整形外科のAssistant Professorの森岡和仁先生も関わっていらっしゃるんですよね。
はい、本企画も森岡先生なしには成り立ちませんでした。
── 串岡先生、今日は楽しい時間をありがとうございました!
3月25日(土)、皆さん参加しましょう!!!
イベント情報

DOCSF 365 Presents デジタル × 整形外科オンラインフォーラム: DOCSF-JAPAN 2023
【イベント概要】
開催日時:
日本時間 2023年3月25日(土)8:00-12:00
米国西部 2023年3月24日(金)16:00-20:00
開催場所:
オンライン開催
参加費:
無料
主催:
DOCSF 365、DOCSF-JAPAN
共催:
University of California San Francisco (UCSF)
Department of Orthopaedic Surgery
POP Digital Group
後援・協力:
日本貿易振興機構サンフランシスコ事務所(JETRO SF)
国立研究開発法人 科学技術振興機構 (JST)
海外日本人研究者ネットワーク(UJA)
協賛スポンサー:
ニプロ https://www.nipro.co.jp/
ニューベイシブ・ジャパン https://nuvasive.jp/
デロイトトーマツコンサルティング(日本)https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/dtc/dtc.html