手術室でも医局でもない、
外科系医師に開かれたオンラインでの研鑽場所

株式会社Medeco 前 裕和先生、北原 貴之先生

多くの医療課題に対してソリューションが求められる現代、次世代を切り開くゼロイチドクターが生まれています。この番組は彼・彼女らのビジョンをゆるく深掘りするトークイベントです。今回は「整形外科これだけ」を運営する株式会社Medecoの前 裕和先生、北原 貴之先生に、ゲストに来ていただきました。

── 面白い取り組みをされている整形外科医2人をお招きしてのコンテンツ収録になっております。前先生、北原先生、自己紹介よろしくお願いします。

前先生:僕は大阪大学整形外科で働いていて、股関節が専門です。北原くんと2人でこの新しい事業を成功させるべく頑張っています。

北原先生:私は大阪大学整形外科の大学院に進学していて、専門は脊椎です。前先生と一緒に「整形外科これだけ」というアプリを作っています。今日は大谷先生よろしくお願いします。

── よろしくお願いします。2人の専門が違うのが良いですね。元々この起業を一緒にしようと集まった2人じゃないと思うので、まずは出会いとか関係性について教えてください。

前先生:僕が医者5年目、北原先生が医者4年目の時に同じ病院で働いていて、わからないことを教え合ったりして、切磋琢磨切してきました。

北原先生:前先生とは家族ぐるみで遊ぶことも多いです。お喋り好きなところや交友関係が広いところが似ていて、すぐに仲良くなりました。「何か新しいことやりたいね」っていうのは、この3〜4年ぐらいずっと言い続けていて、それが事業につながって今に至ります。

前先生:僕が先に大学院に入って、北原先生も後から大学に帰ってきたので、その時になんかやろうやって言って、これにたどり着いたって感じですね。

── なるほど。なんで2人はそんなに何かをやりたがっているのですか?(笑)

前先生:(笑)。2人でYoutubeとかやりたいねとか言うてたんですけど。それよりも、もっと社会に貢献できるようなことやりたいなと思っていて、2年前に現在のプロダクトにたどり着きました。

── じゃあ、コロナ中ですか?

前先生:コロナ中ですね。

北原先生:実は前先生が第1波の時にコロナに罹患したんですよ。回復して帰ってきた時に「2週間休んでて何してたんですか」って聞いたら「赤ちゃんのよだれかけの会社を立ち上げてきた」いうて帰ってきました(笑)前先生はいつもバイタリティ溢れてて、すごく面白い先輩だなと思っています。

── 面白いですね(笑)。なんで”よだれかけ”?

前先生:元々Instagramで子どものことを発信していて、ママさんのフォロワーが沢山いたので良いかなと思ったのと、子どものよだれから僕もコロナにかかったので。

── (一同笑い)

前先生:よだれかけって毎日洗濯しないといけないし大変やなと思って。出かける時も何枚も持っていくの大変やなと。一瞬で乾くような、よだれかけが欲しくて、医療で使うガーゼの知識も使って、一瞬で乾くガーゼの開発に取り組みました。

── すごく面白いですが、深掘ると時間が足りなくなるので進行します(笑)
「整形外科これだけ」にたどり着いた「一番課題に思ったこと」ってあるんですか?

北原先生:「整形外科これだけ」は、新時代の整形科医師教育アプリだと意気込んで作らせてもらっています。
僕らが若い時って、今みたいにスマートフォンじゃなくて、教科書や紙ベースの勉強が普通だったと思うんです。僕らが国家試験受けるぐらいから、だんだんスマホとかインターネットで授業を受ける時代になってきました。
昔は大きなYear noteとか持っていたと思うんですけど、もう今はあまり持ってないですよね。
それに、分類なんかも、時代の加速度に合わせてどんどんアップデートされているので、紙はスピード感に劣るし、頑張って作ってもあまり手に取られることが少ないのかなと思いました。紙の良さと、スマホの利便性を、両立できるものは何か作れないかというところで、アプリにたどり着きました。
今の若手の医師たちを見ていると、よく分からないネットの画像とかで患者さんに説明したりしているのを見て、これは良くないなっていうのをすごく感じていました。利便性と引き換えに、すごく医療教育が手薄になっているなと課題を感じていました。

前先生:あとはインプラント。僕ら整形外科医って、手術でインプラントを使うじゃないですか。
インプラントってたくさん種類があって、いろんなコンセプトがある。
ただ、コンセプトから探す仕組みって無いんですよね。
「こんなんあったらよかった。」「あー、これ後から知ったけど、先に知ってたらコレでやったのに」というような失敗がなくなるような検索システムを作りたいなと思っていました。
例えば、ここに4本ネジ打てるインプラントがあったら、うまくいくかもしれない。
でも、僕はそのインプラントを知らないから、今まで使ってたインプラントでやって、患者さんの骨がくっつかなかった、とか。エキスパートは知ってるけど若手は知らない、とか。

── なるほど。では、アプリ作らなきゃいけないじゃないですか。開発はどうしたんですか?

前先生:僕が阪大整形外科のInstagramの担当で、結構フォロワーも多くて。このInstagramやってる人と仕事がしたいと声がかかったんです。
向こうの企業の人が考えてるアプリもあったんですけど、整形外科医の心に刺さらんなって思ったんですね。
そこで、僕はこんなこと考えてて、これやったら絶対みんな食いつくよというのがあったんで、僕の言うやつやろうよって。
アプリ作ってくれる人と僕の融合が生まれたって感じですね。

── ソーシャルメディアで結果を出してたから、出会いがあったのですね。入局者がとても多いと伺っています。

前先生:阪大整形は3年連続入局者数全国1位です。
入局者ほぼ全員と僕は会ってるので、彼らに教育もしないといけないし、入ってくれたからには幸せになってもらいたいなっていうのがあったんですね。
まだファックスを使ってたり、そういう風な古い体質ってが残ってますので、しょうもない業務を削れる時間はいっぱいあります。
そういうところを削ってあげたらプライベートの時間も増えて、みんな幸せかな、と思ったりします。
患者さんもそうですけど、患者さんのためを思ってやってくれる医者のために何かしたいなっていうのをすごく思っていましたね。

── 素晴らしい。いまの現状は起業という形になっているのでしょうか。

前先生:はい、もう起業っていう形になっています。

── 周りの大学の先生方のリアクションってどうだったんですか。

前先生:すごいねっていう感じでしたね、空想話をせずに、モノができてきてから教授に見せに行ったんです。「若手教育をこんなんにしたい」って見せたら「すごいな、こんなん作る時間どこにあったんや!」言うて(笑)びっくりしていました。
「入局者を入れる方法はもうわかってるんです。次は育てる段階に来てるんです」と。
「阪大は入れるだけであとはほったらかしや」なんて言われたら嫌じゃないですか。
ちゃんといっぱい入ってもらって、ちゃんと育てて、ちゃんと整形外科医にしますよ!という仕組みにしたい。
鬼に金棒っていう言葉が好きなんですけど、それでいきたいなと思っています。

── いいですね。サービスとしても、入局者ナンバーワンの大阪大学整形外科発ですって言えた方が良さそうです。

北原先生:アプリは無料で使えるので、他大学の先生方にもすごくいい反応で受け入れていただいています。
将来的に学閥を超えたようなアプリケーションになってくれたなと、個人的には思ってますね。
未来の若手整形外科医をこういうアプリで、どんどん育てていけたらいいねって、協力してくれる先生方方が多いです。本当に幸せなことに、あまりマイナスなことを言われるは少ないなという印象です。

── 素晴らしい。起業やビジネスしますとか言うと後ろ指刺されるみたいなことは、最近はないですかね。先生たちは2足のわらじが能力的にできてしまうと思いますし。

前先生:できてしまうというより、もうやらないといけないなっていう使命感がありますね。

北原先生:人の2〜3倍は働くつもりで、命削りながらこれやってます。

── 何が原点なんですか?昔から起業したいとか、何か想いがあるのですか?
実は経営者一家ですとか、お父さんが自営業でとか。

前先生:いや、自分の父親は図書館でずっと働いていたんですけど。
一度きりの人生なんで、医者だけやるよりは何かしたいなっていうのはずっと思ってましたね。

北原先生:僕は祖父の代から整形外科一家なんです。祖父、父は整形外科医で、親族が医療関係者だらけですね。小さい頃から医療だけが人生みたいな感じで、あえてレールから1回外れてみたい願望がありました。地元の長崎大学卒業後、阪大整形に入局しましたが、大阪に出てくると、前先生みたいにすごく刺激的な先生との出会いがたくさんありました。
僕の座右の銘が「後悔しない人生」なんですが、こういう新しい世界にどんどん飛び込んで、リスク背負ってでもやっていきたいなっていう思いがあって、今回起業に至った形ですね。

── かっこいいですね。ソーシャル的な才能もあるお2人だと思うのですが、今後の展開について教えてください。

前先生:そうですね、整形外科って実は結構広い。
リハビリにつながるし、整骨院だったり柔道整復師だったり、いわゆるカイロプラクティックも。
そういう人たちも整形外科医はどういうものを見て勉強してるんだろうとか、これで分かってもらえるといいかなと思うんですね。
整形外科医が読んでる教科書を買うっていうのはかなりハードル高いと思いますが、こういう無料アプリを入れるっていうのは凄いハードル低いことなのかな、と。
そういう人たちにも、広めていってもらったらいいかなと思います。
Instagramとかでも阪大整形のインスタを柔道整復師の人がフォローしてくれたりってことがありますので、どんどん広がっていくのかなと思ってますね。

── その肌感覚は貴重ですね。整形外科医じゃない人たちが整形外科領域の学問とか整形外科医が見てるものに対して興味を持ってる、と。

北原先生:実はリハビリの先生方のログインが結構多いんです。
「すごく勉強になりました。先生たちが何考えてるか、よく分かりました」って声をいただきます。
どうしても臨床をしてるとリハビリの先生と喋る時間って少ない。患者の申し送りとかも全然時間がないと思うんですよ。
みんなで知識のアップデートすることできれば医療に対する方向性が定まるので、患者の満足度も当然増えますし、トラブルの元になるような理解の相違が減ってくるのかなと思ってます。

また、コメント欄などで多職種が交流することで、みんなが討論できるような新しいプラットフォームの可能性を秘めてるのかなと感じています。

── 起業1本でいく予定はあり得るんですか?

前先生:いや、僕はそのつもりはないですね。
こういうことをやって、全国の大学の医局全体を盛り上げたい。
大学のイメージって給料安いとかそういうのがあるとは思うんですけど、大学をみんなが目指すような存在にしたいですね。
外の病院で色々頑張って、本山である大学病院で働きたいっていう人が増えれば、医局全体が盛り上がっていくんかなっていうのはすごく思ってます。
今ってやっぱり給料が安いから、優秀でも大学病院に行きたくないみたいな人もいます。
お金のせいで行かないとかしょうもないことじゃないですか。
そうではなく、みんなが目指すようなところにしたいなと思いますね。

北原先生:理想論かもしれないですけど、みんながハッピーになるっていうのが僕らの目標です。
インプラント検索のような機能があると、ディーラーの仕事取っちゃうんじゃないのみたいな不安の声とかもちらほら聞いたりするんですけども、そうじゃないと思います。
基本的にはディーラーの方々のいろんな雑務の業務改善に主眼を置いてやってるっていうのが、僕らが推しているところです。
仕事を取るわけじゃなくて、みんながハッピーに、定時に帰れたら帰る。
定時に帰れて、営業もしっかり効率よく上手くやっていけたらいいなって思うので。

前先生:全員がハッピーからは絶対外れないようにと思っています。
誰かがこれによって職を失うとか、そういうのはよくないっていうのは常に言っていますね。

── ありがとうございます。本サービスでのウリや、今後のアップデート情報があれば教えてください!

前先生:現在、9本柱でやっています。
解剖でいえば、解剖の本って詳しすぎるので、必要なものだけにして掲載しています。
分類もめちゃくちゃあるんですけど、昔の分類が多いので、今使われてるものをカラーにして分かりやすくしています。
これを使って患者さんに説明もできるようなものを目指してやってるっていうのが、ミソですね。

北原先生:イラストを例えば学会とかで使いたいとかなったら、コピーライトだけ入れてもらいますけど、どんどん使っていいですよっていう形にしています。
それも1つ皆様の業務改善につながるかなと思ってます。

前先生:徒手検査って文章で読んでもわからない。だから、全部動画撮りました。
10秒以内でこういう風に検査するんだよっていう動画をすぐ見れるっていうのが特徴ですね。

── 若手の時に欲しかったな。ほんとに。

北原先生:僕らが欲しかったものを作っていますね。
イラストもめちゃめちゃこだわっています。

── 今後の展開として?

北原先生:直近は、専門医試験対策機能がリリースされます。
今年専門医試験受けられる方は、絶対に登録してください。
無料なので、本当にこれはもう、ぜひやって全員合格目指してほしいです。

── 全員合格!

北原先生:もう全員合格。medeco使った子は全員合格してほしいですね。
先程話題に出た、インプラントをスペックから調べられる機能もリリースします。

── すごい。リリースも早いですね。本日はたくさん魅力的な話をいただきました。大阪大学整形外科医局、そして株式会社Medecoの前先生と北原先生に今日は出てもらいました。ありがとうございました。

前先生・北原先生:ありがとうございました!