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【#03 川口善治先生】オリジナリティーの探究が大切

本編に登場する論文

Biomarkers of Ossification of the Spinal Ligament
Yoshiharu Kawaguchi
Global Spine J. 2019 Sep;9(6):650-657. doi: 10.1177/2192568218791799.

The effect of multiple lesions in patients with ossification of the posterior longitudinal ligament of the cervical spine
Yoshiharu Kawaguchi, Masato Nakano, Taketoshi Yasuda, Shoji Seki, Kayo Suzuki, Yasuhito Yahara, Hiroto Makino, Kenji Kobayashi, Masahiko Kanamori, Tomoatsu Kimura
J Orthop Sci. 2019 May;24(3):420-425. doi: 10.1016/j.jos.2018.11.012.

Japanese Orthopaedic Association (JOA) clinical practice guidelines on the management of ossification of the spinal ligament, 2019
Yoshiharu Kawaguchi, Shiro Imagama, Motoki Iwasaki, Takashi Kaito, Masao Koda, Hirotaka Chikuda, Tomohiko Hasegawa, Kanji Mori, Toshitaka Yoshii; 2019 Clinical Practice Guideline for Ossification of Spinal Ligaments working group
J Orthop Sci. 2021 Jan;26(1):1-45. doi: 10.1016/j.jos.2020.07.027.

── 次の論文はGlobal Spine Jに掲載された骨化症のバイオマーカーに関するレビュー論文です。

これはグローバルスパインへレビュー論文として出しました。
色んな論文を集めていく時に自分でストックするじゃないですか。
OPLLガイドラインの仕事の中でタンパクや遺伝子をまとめる必要があった時に、バイオマーカーという視点で論文を整理していたら、これがそのままレビュー論文になるだろうと思ったんです。
自分のまとめをそのままレビュー論文にした訳です。

── 自分で論文をストックしていたら、そのまま論文が書けた!ってことですね。面白いです。

レビュー論文の一番のキモはテーマを見つけることだと思います。
テーマが広すぎるとダメです。
今回はバイオマーカーという、割とニッチなテーマでしょう。
少し前の流行りは疾患感受性遺伝子のレビュー論文とかでしたね。
私も椎間板ヘルニアの疾患感受性遺伝子はSSRRに書きました。(Genetic background of degenerative disc disease in the lumbar spine.

レビュー論文は引用されやすいし、それなりに有用な論文になると思います。
けれども、若い医師はオリジナルアーティクル(原著論文)を書いた方がいいと思います。
やっぱりレビュー論文は少し年寄りが書くものっていうか、俯瞰して書くべき論文です。
オリジナリティは低いと思う。
これとこれを結びつけて何か新しいものを見つけるっていうのもいいんだけど、そこに新規性がないと論文ってあんまり意味がないんじゃないかなと思っています。
だから、若い研究者はできるだけオリジナルアーティクルを書いた方がいいと思います。
レビュアーという立場で論文を評価するときには、科学的手法に則っているか?読者にとって有用な情報か?という2点とともに、オリジナリティのある筆者の主張があるか?を大事なポイントとしてみていますね。
学会誌Journal Spine ResearchのEditrorialの仕事で「読者は論文に何を求めるか」って書いたことがあるので是非読んでください。

── 教室のホームページにも「呉羽山でも、立山でも、富士山でも、エベレストでも構いませんが、頂を目指すことを考えていただきたい」という言葉とともに、オリジナリティの大切さが書かれていますね。

どこの山でもいいからやっぱり頂点じゃないと、オリジナリティがないということで価値が低いと思っています。
日本でトップだったら富士山みたいな頂点になるし、世界でトップだったらエベレストみたいな頂点になる。
でも、そうでなくても富山県の小さい丘みたいな山にも頂点はあるので、それを目指していくのでもいいんじゃないかなと思います。
もちろん高いレベルで目指してもらえれば、それに越したことありませんけどね。

── 次はJ Orthop Sciに掲載された論文です。
頚椎OPLLに対する拡大術後に、胸椎や腰椎のOPLLによる狭窄のために手術加療をうけた患者さんの成績について検討されています。

OPLL患者さんのデータには、全脊椎の評価が入っていました。
OPLLは頚椎に多いけれど胸椎にも腰椎にも存在するんですよ。
その中で、マルチプルに手術を受けている患者さんがいるっていうことを報告しようと思ったんですね。
あとは、頚椎だけじゃなくて色んなところを手術した患者さんたちは、やはり術後JOAスコアの改善が悪いことがわかりました。

── ありがとうございます。
脊髄症の症状がメインの患者さんの頚椎を手術しようとパッと飛びつくんじゃなくて、手術をやる前に胸椎や腰椎もちゃんと評価した方が良いですね。

OPLLは頚椎が多く、胸椎OPLLの方は少し稀ですが非常に重篤な神経症状をきたすことがあります。
胸椎の症例は日本全国で集めて、名古屋大学の今釜先生が論文を書いてくれています。
この論文では領域をまたがる「multiple lesions」という切り口で評価するのはどうだろうと思って調査しました。
見方を変えるとちょっと変わった結果が得られるっていう感じですね。

── 最後の論文は「脊柱靭帯骨化症診療ガイドライン2019」を英文にされたものです。
ガイドライン委員会の委員長になられた時のエピソードを教えてください。

今回のガイドラインは改訂第3版なのですが、前回のガイドライン委員長が大阪大学の岩崎幹季先生だった。
岩崎先生も私もOPLLの仕事をずっとやってきて、私は岩崎先生の論文に共著にいれさせていただいたりもしていました。
改訂第2版の時に、委員長である岩崎先生が私を委員に入れてくださったんです。
それで、第3版を作る時に岩崎先生から「委員長やってくれない?」と言われて、、、岩崎先生に言われて断る道理はないので「分かりました、でもアドバイザーで入ってくださいね」っていう風に言って、アドバイザーとして入っていただきました。
あとは、OPLLの手術や研究を行っている元気の良さそうな若手の先生を日本全国から7-8名集めて委員会を作ろうとしました。
准教授とか講師クラスで勢いのある先生を集めて、凄いメンバーが集まってくださったんですよ。
皆さん、協力的でしたし仕事も早くやってくださって、、、色々なOPLLの発表してらっしゃる先生たちと一緒に仕事してるのは楽しかったですよ。

── 先生が学会誌Journal Spine ResearchのEditrorialで書かれていた「論文の力」、素晴らしい内容でした。
ご紹介いただけますでしょうか!?

論文って作成するのに多大な苦労が必要です。
どこかの雑誌にアクセプトされたら、努力が報われたようで本当に嬉しいですよ。
それ以外にも、外国から別刷りの請求がきたり、学会などでお会いした研究者から以前に書いた論文の講評や質問を受けたり、他の研究者の論文やスライドに自分の論文の一部が引用されていることを目にしたりすると、嬉しいじゃないですか!
椎間板の研究で知り合った香港大学のKenneth MC Cheung先生とはずっと親しくさせてもらっていて、AO spineの活動にも繋がっています。
科学論文には、世界の研究者をつなげる力が秘められていると感じているんですよ。

── 川口先生、ありがとうございました!

こちらの記事は2022年4月にQuotomyで掲載したものの転載です。