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【中村博亮先生 #03】医局の垣根を超えるリーダーシップ

本編に登場する論文

ISSLS PRIZE IN CLINICAL SCIENCE 2019: clinical importance of trunk muscle mass for low back pain, spinal balance, and quality of life-a multicenter cross-sectional study
Yusuke Hori, Masatoshi Hoshino, Kazuhide Inage, Masayuki Miyagi, Shinji Takahashi, Shoichiro Ohyama, Akinobu Suzuki, Tadao Tsujio, Hidetomi Terai, Sho Dohzono, Ryuichi Sasaoka, Hiromitsu Toyoda, Minori Kato, Akira Matsumura, Takashi Namikawa, Masahiko Seki, Kentaro Yamada, Hasibullah Habibi, Hamidullah Salimi, Masaomi Yamashita, Tomonori Yamauchi, Takeo Furuya, Sumihisa Orita, Satoshi Maki, Yasuhiro Shiga, Masahiro Inoue, Gen Inoue, Hisako Fujimaki, Kosuke Murata, Ayumu Kawakubo, Daijiro Kabata, Ayumi Shintani, Seiji Ohtori, Masashi Takaso, Hiroaki Nakamura
Eur Spine J. 2019 May;28(5):914-921. doi: 10.1007/s00586-019-05904-7. Epub 2019 Feb 6.

── 最後に取り上げていただく論文は多施設研究どころではなく、医局の垣根も超えた論文ですね。
この論文が生まれた背景を教えてもらえますか?

常々、多施設研究を引き続きやっていきたいと思っていたのですが、医局というグループの枠を超えてなかった。
日本という単位の研究をするために大学の垣根を超えてやっていかないといけないと思っていたので、賛同いただいた千葉大学や北里大学の先生方にお声かけしたのですね。
千葉大学整形外科大鳥教授から、医局を超えた多施設研究するなら何か目標を持ちましょう、とお話をいただいたのです。
その目標をどこに置くか議論して、ISSLS(国際腰椎学会)でアワードをとるところに目標をおきましょう、と。
ISSLSのアワードの歴代の受賞リストをみていると、臨床研究では日本から誰一人とっていませんでした。
当初、私は正直そこまで考えていなかったのですね。
本当にとれるのか?
そういう固定概念を大鳥教授に取り払っていただいて、目標をそこに定めたっていうのが始まりです。

── 国際学会のアワード受賞という目標を達成するため、トピックに気をつけたりしましたか?
日本が得意なものにするとか、工夫があったでしょうか?

日本では超高齢社会のデータが取れるので、高齢者に視点を当てるべきと思いました。
また、全脊椎レントゲンをルーチンに撮像するようなことは海外の医療システムではなかなかできず、日本でしかできないだろう、と。
また、横断研究なので、ある程度のNを集めることを目標にしていました。

── サルコペニア評価で体組成計での評価をされているのも特徴ですよね。

これまでの論文では、体幹筋肉の量や質を測定するためにMRIやCTを用いているものが多かったです。
ただ、全例測定には簡便性が欠けていたり、CTでは放射線被曝の問題があり、本研究のようなNが多い研究では難しいです。
比較的簡便で侵襲性の少ない体幹筋評価として体組成計を用いることにしました。
面白いことがわかりました。
四肢の筋肉量は経年的に落ちるのですけど、体幹筋はある程度のところでストンと落ちるような変曲点のあるカーブを描くのですよね。

── 医療統計で有名な新谷先生も共著に入られています。

新谷先生は臨床家の味方で、我々に足りないところを補ってもらっています。
新谷先生とお話させていただくと気が楽になりますね!
後ろ向きでしか研究をできないときに、われわれ臨床家だけだと困ることがあるのですが、新谷先生は、欠損値があっても良いとか、サンプル数を決める話をしてくれたりとか、色々教えてくれます。
新谷先生の形式的ではないアドバイスが素晴らしく、本当に相談しやすくありがたかったですね。

ISSLSでのアワード受賞

── 受賞の際のISSLSの学会ではどうだったのですか?

表彰式の当日にAward presentationの時間がありまして、筆頭著者の堀先生が一人で立派にプレゼンテーションしてくれました。
1ヶ月前に通知をいただいて、しっかり準備をしてくれました。

── 有言実行ですよね。

検証しないといけない事象がたくさんあると思うのですけど、その1つにはなったかな、と思います。
共同研究している他大学の先生方からも別の切り口で論文がでてくると思います。

── 医局も超えて多くの人をまとめるというと、マネージメントとは違ってリーダーシップが求められると思います。

リーダーシップというと、ともすると上意下達という意味に取られることもあるかと思うのですけど、私はそれは違うと思っています。
色んな具体的な方策を示して、そこに同意していただいた方たちの力を集める。
そこにリーダーシップが求められると思っています。
実績ができると、また次の新しい方策を示して、人に集まってもらう。
それがリーダー像なのかな、と思います。

── 次の何か目標はあるのでしょうか?

健康寿命延伸が一大テーマですね。
これまで、認知症やがんや脳血管障害の治療に注目が集まっていましたが、健康寿命を阻害する要因のメインは運動器ですね。
例えば、脳血管障害は全ての人に発生するわけでは無いですが、運動器の機能低下は皆が経験するのですよ。
運動器機能への対策を講じないと日本の健康寿命の延伸は望めないだろう。
いまだと平均寿命と健康寿命の解離が10年程度あるわけですけど、これが1年変わるだけで大変な意味がある。
脊椎を中心にしながらも、色んな運動機能や健康寿命に関わるところを何とかできれば。
多施設研究も大事ですが、地域という単位ででもできればと思っています。
まずは大阪地域の健康寿命を伸ばすということを目指したいですね。

── 素晴らしいですね。
お時間もなくなってきたので、最後に先生の腰の状態はいかがでしょうか?

あんまり良くないかな、笑。
ずっと怖くて自分の画像検査はできていなかったのですが、30年ぶりに撮像したら少し腰椎前弯が減じていました。。。
それにショックうけまして、日々の体幹エクササイズが大事だと思っていますね。

── ありがとうございました。

こちらの記事は2021年4月にQuotomyで掲載したものの転載です。